05.18.03:16
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08.08.14:03
H21論述SS
H21小論文SS
(著者は2008年の設定)
(論点)都議会は2008年6月、原油換算で年間1500kl以上のエネルギーを消費する大規模事務所にCO2排出削減を義務づけた。また、「ディーゼル車NO作戦」は都の大気汚染を大きく改善した。環境技術の進化は経済を活性化する原動力になる。こうした認識は経済界にも広がっている。
世界では、ロンドン、ニューヨークなどの世界的な都市は次々と意欲的な気候変動対策を始めている。問題の深刻さを考えれば、もはや国際交渉の進展を待っている場合ではない。自治体や企業、個人それぞれが動き出すべきである。
これらの主張について、1200字以内で論評せよ。
気候変動対策は、多額の資金を要する。特に、その対策を施す組織が大きければ大きいほど、多額の資金が必要となる。
現在世界が取り組むべき対策として、温室効果排出ガス規制が挙げられる。これは、1997年に京都で採択された「京都議定書」で、主要先進国に一定のCO2排出規制を課し、2012年までにその目標を達成しなければならないものであるが、これについては先進各国でも認識がそれぞれ異なり、事実、アメリカはこれから脱退している。CO2排出規制は、それにかかるコストはもとより、経済規模を縮小させる恐れもあるからである。
資本主義経済である以上、経済規模が縮小することは、その国が衰退していくことを意味する。従って、政府としては、削減することによる気候変動リスクを緩和するメリットと、自国の経済成長率を天秤にかけなければならないのである。
率直に考えて、気候変動対策は我々の将来における安全保障と同義である。だが、国という大きな組織では、様々な利害関係により、なかなか気候変動に対する方針が打ち出せないばかりか、具体的な対策にもかなりの時間が必要となり、それが効果として表れるのはもっと後になるであろう。
しかしながら、近年、脅威は現実的なものとして既に報告されつつある。従って我々はすぐさま行動を開始しなければならない。
そういった意味では、東京都に代表されるような、自治体ごとの取り組みは大変画期的と云える。国とは、各自治体の集合体である。国が方針を決めかねているのなら、よりスリムな自治体ごとに行動方針を決めて取りかかれば、それは結果的に国の削減量に寄与することになる。
特に東京都市圏は3500万人もの人口を抱え、その経済規模は世界の第十位の国に相当するものである。また、ニューヨーク大都市圏やグレーターロンドンもそれぞれ1900万人、1300万人の人口を抱え、これまた世界有数の経済圏を形作っている。
経済活動は本来人間活動の総体である。人の集まりが国家を形成する。ならば、これら国家に属する市民たちが自らの手で行動を開始するのは当たり前といえば当たり前である。
実際、その国の経済規模は、国内の有数の大都市圏が形成する経済圏にほとんどが集中する。また、同様に企業のほとんどがそこに集中している。日本でいえば、三大都市圏に国民の半分以上が集中し、企業もまたそうである。極論、これらの大都市がすべて気候変動対策に乗り出せば、国が何も指示しなくとも、その国はしっかりと気候変動対策に乗り出しているのである。
その際、重要なファクターとなるのが我々市民である。国という漠然とした総体ではなく、自分たちの街による、自分たちの街のための取り組みであると、親近感が湧くばかりか、その効果を目に見て感じることができるはずである。
時代は既に変わりつつある。我々は、将来の長きにわたる持続可能な開発を実現するために、今、行動を開始しなければならないのである。
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