05.18.12:16
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07.31.23:59
H12論述SS
H12小論文SS
(著者は1999年の設定)
(論点)97、98年度の我が国のCO2排出量は前年比0.4%減少した。97年、98年のCO2排出量の減少を説明する理由を挙げた上で、「2008年から2012年の間で温室効果ガス排出量の平均値を90年度比で6%削減する」という京都議定書の削減目標を達成できるか否かについて私見を述べよ(1200字)。
97、98年度のCO2排出量減少に転じた理由は、アジア通貨危機に代表される不況により、国内総生産がマイナスに転じたことが原因として考えられる。言うまでもなく、CO2排出量は経済活動の規模に比例する。諸先進国がそうであるように、我が国も例外ではない。
二度にわたるオイルショックを経験した我が国は、それを契機に製油依存型の産業構造を抜本的に変革し、天然ガスおよび原子力エネルギー等を積極的に導入しつつ、エネルギー効率化を図ってきた。そして、今や我が国はそれにおいて他国を圧倒するエネルギー効率優良国となった。しかしながら、そんなわが国であっても、CO2排出量が減少ないし平行線を辿ったわけではなかった。産業部門では、確かにエネルギー高効率化の実績により、エネルギー消費量を抑えつつ、生産規模を拡大することができた。すなわち、この部門においてはCO2排出量が平衡ないし減少に転じる実績を示している。しかしながら、国の経済規模は産業のみでなく、それに係る一連の流通、消費も当然含まれる。生産量が拡大したら、当然ながら、流通・消費の市場も拡大する。これらは、産業のように、エネルギー機器の高効率化を改善することによって対処することは困難である。なぜならば、これらはオートメーション化による生産量の拡大ではなく、人間の意志による経済活動の活発化の結果だからである。人間の意志は操作不能であり、それを目論むならば、それはまさにファシズムと言えよう。
アジア通貨危機は、アジア諸国に様々な打撃を与え、消費者の財布のひもは固くなった。当然ながら、それに伴う投資・生産は縮小に転じた。その結果、実質経済成長が負に転じた代わりに、CO2排出量が減少するという功を奏することができたわけではある。しかしながら、この事実は地球温暖化の観点からは歓迎されるものであっても、一般的な資本主義原理からしてみれば喜ばしくないものである。
我々はここで、経済活動と地球温暖化防止という、背反するジレンマに直面せざるを得なくなってしまったのである。では、我々は京都議定書の削減目標達成は無理なのであろうか?
結論から言うと、現状の体制であれば不可能であろう。その数値目標を達成するということは事実上、GDPを6%減少させることと同意だからである。少なくとも、工業立国であり、加工貿易で成り立っている我が国がその目標を達成させるとなると、国力の後退は免れない。しかしながら、我々はCO2排出量削減が経済活動のネックになるという先入観に囚われ過ぎていやしないだろうか?経済活動はそもそもイノベーションなくしては成り立たない。ならば、科学技術立国である我が国は、CO2排出量削減義務はネックではなくむしろ、次世代のイノベーションを促進するための布石を云えるのではなかろうか?従って、大切なことはこの課題をいかにして我々の成長につなげることができるかという我々自身の発想の転換である。
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